2001年5月12日, 土曜日
『石が叫んでいる』
先日、東北のあるゴスペルクワイヤーからワークショップとゴスペルのメッセージをしに来て欲しいという依頼があった。クワイヤーのメンバーは20人程でクリスチャンではない。リーダーは以前は教会に行っていたが今は行っていないという。教会に行かなくなった理由は聞かなかった。彼らはチラシを作り、方々に案内をした。
クリスチャンではない彼等が教会を訪ねて案内もした。彼等の熱心な案内によって80人収容の会場には約150人程の人が集まった。彼等の要望は、2時間半でワークショップと私のコンサートとゴスペルメッセージをして欲しいという事だった。何と難しい注文だろうと思ったが、せっかくここまで来たのだから出来る限り応えられるよう努力した。
150人のほとんどがゴスペルを歌うのが始めてという人達である。先ずゴスペル音楽の成り立ちについて話してから実際に歌ってもらう事にした。まず体を動かす事、リズムを感じ、ステップを踏んで声を出す。東北もずいぶん変わったもんだ。お年よりも一生懸命についてきてくれる。
「I've got peace like a river」という易しい曲を選んで、詩の意味を説明しながらメロディーを覚えてもらい、ユーモアを交えながら楽しく練習すると、たった1時間で全員が一つになって歌うことが出来るようになった。楽しい雰囲気になったところで、聖書のヨハネ7章から「表現」というテーマで「生ける水の川が流れ出るようになる」というゴスペルメッセージをした。聖書の話を聞くのはおそらく初めてだろうという人達が熱心に食い入るように聞いてくれた。コンサートが終わると会場の人々が次々に話しかけてきた。その内の一人は若い市議会議員だった。市で計画しているダム建設に環境破壊の面から反対している只一人の議員で、「生ける水の話しに励まされました。いつか自分の集会に来て話して下さい」と握手をされた。カソリック教会の神父もいた。重要文化財に指定された築100年になる教会だ。彼からも次にはそこでコンサーをして欲しいという招きだ。町の陶芸家もいた。地元のサロンになっている名家で蕎麦屋の店主もいた。地方紙の記者も取材に来ていた。そんな方々から、「聖書の話は初めてだけれどいい話だった、また聞かせてください」と感謝された。
私はその夜、一人で温泉につかりながら考えた。こんなに気軽にゴスペルを伝えられる時代が日本にかつてあっただろうか。確かに今、日本に新しい事が始まっているのだ。石が叫んでいる。(参照:ルカ19:40)