2009年5月19日, 火曜日
『団塊という使命』
銀行を早期退職させられた主人公が消滅の危機に迫られていた商店街「梅之園ハッピー通り商店街」の再生にチャレンジする。彼の呼びかけに応じて建築家やイベントのプロ、元商社マン、NPO代表など、知識と経験溢れる七人の団塊たち(エキスペリエンツ)が立ち上がり「高齢者が歩いて暮らせる街を造る」という同じ夢に向かって挑む。これは堺屋太一さんの小説「エキスペリエンツ7 団塊の7人」に描かれたストーリーだ。ここには団塊の世代が持つ経験という財産と、それを夢のために活用するというパッションと、プロジェクトに集まる人たちの絆が描かれている。
団塊の世代は戦後の日本経済にとって常にビジネスターゲットだった。とにかく人口が多い。僕が中学の時、一学年にクラスが10クラス以上というのは珍しくなかった。しかも一クラスに50人もいる「すし詰め学級」だった。これだけ人口が多い世代だからビジネスターゲットになるのは当然である。この世代にヒットすればビジネスは成功したのだ。それは戦後の日本経済を牽引してきたのだ。今もそれは変わっていない。定年を迎えたこの世代は莫大な退職金を手にする。これを何とかむしり取ろうと躍起なのである。牧師である私などは定年という制度がない。それは牧師という働きが一般的な仕事ではなく、神から与えられた使命だからだ。死ぬまで使命に従うのが牧師なのだと思う。自分が与えられた使命を手放すまでが牧師なのだ。その代わりに退職金もない。
私は団塊の世代というのは一つの使命だと思っている。良い意味でも悪い意味でもこの世代は新しい文化を築いてきた。核家族化、個性的ファッション、ロックもフォークも、父権の喪失、自由恋愛、道徳低下、個人主義、バブル…。良いことにも悪いことにもこの世代が絡んでいる。それだけ影響力があるのだ。次の世代に何を残せるか、次の時代に希望を与えられるか、まだまだ団塊の世代のやるべき事はたくさんある。エキスペリエンツが沢山いるのだから。定年を迎え、余生は楽に好きなことをやって暮らす、なんていうまやかしに乗ってはいけない。教会は若い世代ばかりに目を向ける傾向がある。それは大切なのだが、団塊の世代に使命を持たせる事に関心を向けて欲しい。世界的に一番多い人口層であるという事実は変わらないのだから。立ち上がれエキスペリエンツ!