2000年11月 9日, 木曜日
『はっぴいな日々』
「はっぴいえんど」にまつわる「はっぴいな日々」という本が出版され、私の所にも一冊送られてきた。はっぴいえんどといえば、今でも音楽好きな若者達に影響を与え圧倒的に支持されている70年代の日本を代表するグル-プである。実は私はその一員になるかもしれなかったのだ。それ以前に私は「フロ-ラル」と「エイプリルフ-ル」という2つのバンドを経ていた。初めのバンドは、あるレコ-ド会社によって戦略的に作られたバンドだった。電気メ-カ-のスポンサ-がつき、レコ-ド会社が持っていた会員2万人のモンキ-ズ・ファンクラブを利用してス-パ-バンドを作ろうとして、オ-ディションによって集められたバンドだった。そこに私はボ-カリストとして参加した。今思えば最高の待遇だった。わずか18才の若者が当時の大卒者の平均初任給の3倍ものギャラをもらっていた。初めはその環境に満足していたが、作られた環境に次第に抵抗するようになり、1年ほどでバンドは解散してしまった。次に作ったバンドは自分達の満足いく音楽をやろうとして新しいメンバ-を集めた。「エイプリルフ-ル」と名付けられたそのバンドも音楽的方向の違いからわずか3ケ月で解散してしまった。私と細野晴臣、松本隆の3人はディスコの仕事が終わった後によく集まって自分達の音楽について語り合い、やがてまた新しいバンドを作る計画を話し合っていた。
しかし、私には彼等とは違う別の世界があった。当時のアンダ-グラウンド演劇に興味を持っていた私は、そんな友人達とミュ-ジカル「ヘア-」のオ-ディションを受けてしまった。それが一つの分かれ目になって、私はヘア-に出演する事になり、彼等ははっぴーえんどを作った。ヘア-は開演から3ケ月で幕を閉じ、私はシンガ-ソングライタ-として活動する事になる。それからわずか6年で私はクリスチャンになり、新しい道を歩みを始めるのだ。
一冊の本が自分にとって最も濃厚な時代だったと言える当時の記憶を呼び戻してくれた。あの頃を振り返って、今の自分だったらあんな選択はしなかったのになどと思う事もある。しかし、そうしていたら今の自分はなかったかもしれない。歴史とは実に不思議なものだ。人生には幾つもの岐路があり、その度にどちらを選ぶか決断しなければならない。私はずいぶん下手な選択、愚かな選択をしてきたと思うが、今になってみれば回り道した全てが益となっている。そう思えるのは実に感謝な事だ。
誰でも自分の人生を振り返って、ずいぶん脇道にそれてしまったと思う時があるはずだ。時間を戻す事は出来ないが、全てを益に変える道なら一つある。それは、イエスキリストを救い主と信じ、その方に人生を委ねるという最大の決断以外にない。その決断こそはっぴいな日々への第一歩なのである。